生物間相互作用(interaction between organism)

異種の生物間では、補食-非補食関係、共生関係、寄生-被寄生関係などのような複雑多岐にわたる関係でつながり、これらの関係のなかで群集や生態系が成立している。また、相互間作用は関係する生物間に共進化を起こすことも知られている。生物多様性はまさに生物相互間作用が作り出しているともいえる。
野生生物保全技術
野生生物保全技術
佐藤 正孝, 新里 達也

外国産クワガタムシ

外国産クワガタムシについてはこれまで植物防疫法によって輸入が保留とされていたが、1999年11月に48種類の外国産種の輸入が認められて以来、次々に輸入許可種が増え、2003年6月現在505種のクワガタムシの輸入が許可されている。植物防疫法は日本の農林作物を保護するための検疫法であり、クワガタムシのように農作物を加害する恐れが低いと判断される昆虫に対しては事実上、規制機能はない。

日本に輸入されている外国産クワガタムシ類は、おもに中国・東南アジアを中心とする山岳地帯および熱帯林に生息している。これらがペット用に大量に輸入され日本に定着し、日本産クワガタムシと交雑して雑種の形成を繰り返すことで日本固有のクワガタムシ遺伝子組成が撹乱される恐れがある。

日本には約35種類のクワガタムシが生息する。生息域は種によって異なり、北海道から九州まで広く分布するものもあれば、標高の高い地域に局所的に生息するものもいる。とくに島国である日本は島ごとに固有の種や亜種が生息しており独特の多様性を示している。

日本のクワガタムシは、島国独特の種組成および遺伝子組成を形成していると考えられる。今後、この貴重なクワガタムシの固有性を保護するためにも、地域レベルでの個体群の保全活動を実行する必要がある。また、その基礎データとして日本の野外におけるクワガタムシの生態や分布、遺伝的変異などの生物的情報の収集を行うことも大切であろう。外国産クワガタムシの輸入については早急に検疫・審査のための法律および機関の整備を検討する必要がある。

生態学からみた野生生物の保護と法律

野生生物の絶滅原因

乱獲、生息地・生育地(以下「生息地」という)の破壊(分断、孤立化を含む)、外来種(家畜種の野性化を含む)による影響、環境汚染、伝染病などである。ただし、必ずしも単独の原因で絶滅が起こるわけではなく、多くの場合は複合的な原因による。

また、こうした原因が直接の脅威となっていなくても、繁殖可能な集団の個体数が一定数を下回ると、環境の変化や遺伝的なゆらぎによって絶滅は引き起こされてしまう。

種の絶滅は国家的な経済政策や開発政策にも起因する。とりわけ、公共事業による種の絶滅は深刻である。絶滅の規模からいえば、公共事業は、一挙に種を抹殺することもできる。このような認識(つまり、国の政策、計画、事業などが最大の絶滅原因になりうること)をもつことが、絶滅阻止の第一歩となる。

生態学からみた野生生物の保護と法律

カワヒバリガイ

淡水性二枚貝のカワヒバリカイは、わが国では1992年に琵琶湖で初めて生息が確認されたが、琵琶湖、淀川、長良川、木曽川、揖斐川などに生息するようになり、利水施設の取水管や導水管の内壁に付着・増殖して深刻な障害をもたらしている。

2000年に宇治川でオイカワを大量死させた寄生虫(フケファルス科の吸虫)の主要な第一宿主は、外来種のカワヒバリガイではないかと疑われている。

外来種がもたらす魚病が漁業に影響をおよぼす可能性もある。

生態学からみた野生生物の保護と法律

外来種の水産業への影響

オオクチバスやブルーギルについてよくしられているように、漁業対象種を補食するなどして外来種が漁業に大きな影響をおよぼすことがある。しかし、河川や湖沼の全般的な環境悪化が同時に進行して、漁業ヘ複合的な影響を与えていることが多く、外来種の影響だけを個別に取り出して被害総額などを計算することはむずかしい。

琵琶湖は、長い歴史をもつ内陸湖であり、40種を越える固有の魚介類が生息している。琵琶湖では1955年には10,000tを越えていた漁獲量が、1999年にはほぼ2,000tまでに落ち込んだ。琵琶湖の沿岸帯で春に繁殖するフナ類、モロコ類の漁獲高の落ち込みが、アユやビワマスなど秋に河川で産卵する魚に比べて著しい。オオクチバスが急速に増加した1970年代後半から1989年代初頭までの時期と、ブルーギルが急増した1990年代半ばからの漁獲量の減少が目立つことから、湖の環境の全般的な悪化に加えて、これら外来魚による補食圧が漁獲量減少の重要な要因となっていることが示唆される。

生態学からみた野生生物の保護と法律

ツキノワグマ

本州、四国、九州に分布しているが、四国山地の生息数は多くて数十頭程度、九州地方の個体群は絶滅した可能性が高い。成獣の頭胴長は約140㎝、体重は約80㎏程度である。体側は黒く、ふつう胸にV字型の斑点(月の輪)がある(まれにない個体もある)。春はブナの若葉や前年の落ちたドングリ、夏はザゼンソウなどの草とともにハチやアリ、秋はドングリ類やクリなどの堅果類、ウワミズザクラなどの漿果類を食べる。臆病で神経質なため暗いところにひそむ。人と出会うともっぱら逃走するが、きわまると逆襲することもある。

ツキノワグマとヒグマは、国際希少種ではあるが、「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護法)」に基づき合法的に捕獲された国内に生息する個体(身体部分を含む)またはそれから繁殖させたものの譲渡が規制の適用除外とされる。合法的に捕獲されたもののの譲渡をそのまま野放しにしたのでは、違法なものを合法なものから識別して流通市場から排除することはできない。特に、クマ類については胆のうの経済価値ゆえに密猟され、それが取り引きされている実態があり、問題は大きい。

生態学からみた野生生物の保護と法律

突然変異メルトダウン

個体数が少ないと、確率的な効果である遺伝的浮動によって本来は自然淘汰で除去される「有害遺伝子」(生存や繁殖にとって望ましくない形質を発現する遺伝子)が固定してしまい、その効果によって個体数がさらに減少するという、負のフィードバック(=悪循環)であり、個体数の縮小と遺伝的劣化が相互に加速しあう現象である。

生態学からみた野生生物の保護と法律

自然保護法制の課題

  1. 生物多様性条約など、国際環境法レベルでは野生生物とその生息地の保護に関する条約に参加しながら、国内法では野生生物と生息地の保全が十分に担保されていない。つまり、国際環境法の実施手段としての国内自然保護法が具体化されていない。国内自然保護法は生物多様性という概念を知らなかった時代に制定された。国際環境法は生物多様性保護を目的として発展している。時代に合わせた改正が急務である。
  2. 国際環境法と国内法を架橋するものとして、環境基本法や生物多様性国家戦略などがあるが、これらと国内法がマッチしていない。国内法はそれぞれ独自の目的をもって制定されているために、両者をリンクさせ、その整合性を図るような野生生物保護基本法を制定し、これに合わせて国内個別法を改正していく必要がある。
  3. 環境保全を目的に含めない開発法、資源管理法、公物管理法が数多く残されており、これらの法律のために野生生物の生息地が危機に瀕している。公有水面埋立法、総合保養地整備法など、時代遅れの法律がまかり通っている。

生態学からみた野生生物の保護と法律